卸売・販売店・委託販売と流通の制限

表題ではなく、所有権がいつ移り、収益が差益か手数料かで契約の型が決まります。型に合った精算・報告・在庫の条項を組みます。

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表題は「委託」なのに、仕入れて差益で売る構造。手数料の請求や終了時の在庫の返還を求めた途端に、どちらの型かで争いになります。

このページの要点

  • 委託販売は売れるまで所有者の物で手数料、卸売は仕入れで所有権が移り差益。所有権・価格・収益・売れ残りで見分ける。
  • 委託販売は、締日・支払日・精算書の提出期限・異議の期限を一つの条で決め、在庫は製造者の名義で管理する。
  • 販売価格を定めて維持させることは再販売価格の拘束(独占禁止法2条9項4号)。希望小売価格は参考として示す。
  • コミッションの控除費用は限定列挙し、終了後の発生期間と対象の客先を決める。

結論:表題ではなく「所有権がいつ移り、収益は差益か手数料か」で契約の型を決める

メーカーやブランドが商品を他の事業者に売ってもらう方法には、大きく二つの型があります。一つは、相手方が商品を仕入れて自分の名前で再販売する卸売(販売店)の型です。相手方は仕入値と販売価格の差(差益)で収益を上げ、商品の所有権は仕入れた時点で相手方に移ります。もう一つは、相手方が所有者のために商品を販売し、売れた分について手数料を受け取る委託販売の型です。商品は売れるまで所有者のもので、売れ残りは所有者に戻ります。

アトラス行政書士法人が作成・レビューしてきた契約書では、「販売委託」「委託販売」「卸売」といった表題と、中身の構造が一致しているかを最初に確かめます。表題がどうであれ、所有権がいつ移るのか、販売価格を誰が決めるのか、収益が差益なのか手数料なのか、売れ残りを誰が引き取るのか、という構造によって、精算・報告・在庫・危険の条項の組み方がまったく変わるからです。構造に合わない条項が混じると、手数料の計算や終了時の在庫の扱いで必ず揉めます。

このページでは、委託販売と卸売の違い、それぞれの契約の設計、流通の制限と独占禁止法、製造者の直接取引に対するコミッションの設計、終了時の在庫を整理します。商品の紹介や営業の代行で手数料を受け取る代理店の契約は代理店・フランチャイズの契約書ガイド(姉妹サイト)、消費者向けの通信販売の規約や表示はネットショップ・EC販売の法務ガイド(姉妹サイト)で扱っています。所有権の移転の基本は所有権の移転・危険負担・所有権留保のページをご覧ください。

委託販売と卸売:違いは契約書のどこに表れるか

二つの型の違いを、事務所の書類に即して並べると次のようになります。食品(精肉・調味料)の委託販売の契約は、ECサイトを運営する販売者が製造者の商品を販売し、所有権は顧客への引渡しまで製造者に留保される型です。化粧品・食品素材の掛率による取引の契約は、相手方が希望小売価格に掛率をかけた価格で仕入れ、再販売の差益で収益を上げる型です。

委託販売と卸売(仕入れて再販売)の構造の違い

項目委託販売(食品の例)卸売・仕入れて再販売(化粧品素材の例)
所有権製造者に留保。販売者が第三者に販売・引渡しした時に製造者から第三者へ直接移転相手方の指定した運送会社等に引き渡した時に移転
危険販売まで製造者(在庫は製造者名義で管理)所有権と同時に移転
販売価格卸価格に販売手数料相当額を加算して設定相手方が自ら決める(希望小売価格は基準として示す)
収益販売手数料(卸価格の20%を基準)仕入値と販売価格の差益。手数料は請求しない
精算締日ごとに売上から手数料を控除して製造者へ送金、月次の精算書仕入代金の支払。月次で売上・返品・在庫を報告
売れ残り製造者の所有物。担保設定・処分は禁止相手方の所有物。終了時の処分に条件を付ける

表の右欄のような構造で表題が「委託」になっていると、手数料の請求や終了時の在庫の返還を求められたときに、どちらの型なのかで争いになります。

見分けの決め手は、所有権の移転と収益の形の二つです。所有権が仕入れの時点で移り、相手方が自由に販売価格を決めて差益を得るなら、それは卸売です。その場合は、手数料の条項ではなく、仕入代金の支払と再販売の条件を書きます。反対に、所有権を残したまま販売を任せるなら委託販売で、在庫の管理と売上の精算の条項が中心になります。

委託販売の設計:手数料・精算書・在庫の名義・サイトのコンテンツ

食品の委託販売の契約では、依頼者が原案にコメントを付けて相談され、事務所が整備版を作成しました。販売価格は、卸価格に販売手数料相当額(卸価格の20%を基準)を加算して設定し、送料は手数料の算定の外とし、販売者が管理・精算する、としました。代金は20日締め翌月20日払いで、販売者が手数料を控除した後の額を製造者に送金します。依頼者の原案には「翌月20日支払」と「翌月末日支払」が混在しており、依頼者自身がコメントでその矛盾を指摘していたため、整備版で翌月20日に統一しました。

精算の手続として、販売者は翌月5営業日以内に月次の委託販売精算書を製造者に提出し、製造者が5営業日以内に異議を述べなければ承認したものとみなす、としました。委託販売では、売上の数字を持っているのは販売者だけなので、精算書の提出の期限と、確認・異議の期限をセットで決めておかないと、製造者は送金額の正しさを確かめられません。

依頼者からは「受託業務はこれだけでいいのか、サイト公開までの制作なども載せなくていいのか」というコメントもありました。整備版では、受託業務にWebサイトの企画・構築・運営、コンテンツの制作・管理を加え、別の条でサイトのコンテンツの帰属を整理しました。販売者が作ったコンテンツは販売者に、製造者が提供した素材は製造者に帰属しますが、製造者の素材は販売・広告に必要な範囲で承諾なく使える、としています。「商品名を全部入れるのは無しの方がよい」というコメントに対しては、商品リストを別紙にし、書面で随時追加・改定できる形にしました。委託販売では、販売の場を作る作業と、売れた後の精算と、取扱商品の入れ替えが、契約の運用の中心になります。

在庫の扱いも委託販売の要です。整備版では、所有権は製造者に留保し、販売者が第三者に販売・引渡しした時に製造者から第三者へ直接移転するとしたうえで、販売者は製造者の名義で在庫を管理し、在庫に担保を設定したり処分したりしてはならない、と定めました。販売者が倉庫で商品を預かっていても、それは製造者の物であることを帳簿の上でも明らかにしておくためです。販売者の側に倒産などの事態が生じたとき、製造者が在庫を自分の物として取り戻せるかどうかは、この名義の管理にかかってきます。

条文例 第○条(委託販売の精算)

  1. 乙は、毎月20日を締日として、前月21日から当月20日までの本商品の販売代金から、第○条に定める販売手数料を控除した額を、翌月20日までに甲の指定する口座に振り込む。
  2. 乙は、毎月の締日の後、翌月5営業日以内に、販売数量、販売代金、販売手数料、送料その他の精算の内訳を記載した委託販売精算書を甲に提出する。
  3. 甲が前項の精算書を受領した日から5営業日以内に異議を述べないときは、甲は当該精算書の内容を承認したものとみなす。

締日・支払日・精算書の提出期限・異議の期限を一つの条にまとめ、日付の矛盾が生じないようにします。

卸売(販売店)の設計:掛率・販売地域・報告・返品

化粧品・食品素材の掛率による取引の契約では、相手方は希望小売価格に対して、1回の注文数量に応じた2段階の掛率をかけた価格で仕入れ、供給する側は販売手数料を請求せず、相手方は再販売の差益で収益を上げる、という構造にしました。所有権と危険は、相手方が指定した運送会社などに引き渡した時点で移ります。販売地域は日本国内とし、違反は重大な違反として即時に解除できるとしました。取引は非専属で、供給する側は他の事業者にも販売を委ねることができ、相手方は異議を述べません。

この契約では、相手方に、売上の数量・金額、返品の数、在庫の数量を毎月報告させ、帳簿の閲覧も認めさせています。仕入れて売る卸売では、商品はすでに相手方の物なので、供給する側が売れ行きを知るには報告の義務が必要です。消費者の都合による返品は、法令で義務付けられる場合を除いて受けない、としました。相手方が消費者に販売するときの返品の条件は、相手方の販売の規約で決まることなので、供給する側との間では、どの範囲の返品を引き取るかだけを決めておきます。

化粧品の卸の取引基本契約では、卸業者に販売実績のデータ(顧客情報の追加を依頼できる)を毎月提出させる定めを置きました。並行輸入品を扱わないことを約束させる定めもあります。販売データの提出を求めるときは、データに個人情報が含まれるかどうかと、その取扱いのルールもあわせて決めておく必要があります。

販売店に独占的な販売権を与える場合は、別の論点が加わります。ホワイトラベルの再販の契約をレビューした別の案件では、独占販売権を与えているのに、販売店の販売努力義務、最低販売目標、独占を維持するための条件が定められていないことを指摘しました。独占を与えた側は、その地域や販路で他の販売店を使えなくなるので、販売店が十分に売らない場合に独占を解除できる仕組みがなければ、売上の機会を一方的に失います。ロイヤリティを売上に連動させる場合は、割引・無償提供・まとめ売り・前受金・顧客の未払い・途中解約による返金を算定でどう扱うかも決めておきます。

卸売の条項を、立場でどう書くか

メーカー・供給側

  • 掛率の段階と適用の条件(1回の数量など)を決める。
  • 月次の売上・返品・在庫の報告と、帳簿の閲覧を義務付ける。
  • 引き取る返品の範囲を、法令で義務付けられる場合などに限る。
  • 終了時の在庫の処分に、ブランドを損なわない条件を付ける。

販売店・仕入側

  • 非専属か専属かを確認し、専属なら供給側の他への販売の制限を求める。
  • 販売価格は自ら決められることを確認する。
  • 終了時の在庫の買戻しを協議できる定めを置く。
  • 報告するデータの範囲と、顧客情報の扱いを限定する。

流通の制限と独占禁止法:販売価格・販売先・販売方法

卸売の契約では、メーカーが販売店の販売価格や販売先、販売方法を制限したいと考えることがよくあります。しかし、自己の供給する商品を購入する相手方に、正当な理由がないのに、その販売価格を定めて維持させることその他相手方の販売価格の自由な決定を拘束する条件を付けて商品を供給することは、「再販売価格の拘束」として独占禁止法上の不公正な取引方法に当たります(独占禁止法2条9項4号)。卸売の契約で希望小売価格を示すときは、あくまで参考の価格として示し、それを守らなければ解除や損害賠償の対象になるような書き方をしないことが基本です。

販売先や販売方法の制限(特定の業態の店にだけ売らせる、ネット通販での販売を禁じる、販売地域を限るなど)は、価格の拘束とは扱いが異なり、内容と目的によって評価が分かれます。相手方の事業活動を不当に拘束する条件をつけて取引することは、公正取引委員会が指定する不公正な取引方法の一つとされています(独占禁止法2条9項6号ニに基づく指定)。ブランドの管理や品質の維持のための制限であれば、その目的と、目的に見合った範囲であることを説明できる形にしておく必要があります。

海外で再販売する法人に卸す売主側の契約では、販売地域を特定の国の国内市場に、販売チャネルを特定の実店舗とオンラインショップに限り、再販売には書面の同意を要するとしました。販売地が海外の場合は、販売地の国の競争法との関係も別に生じ得ます。化粧品の双方向型の仕入・販売契約では、独占的な取引は別途の独占契約で、対象製品・地域・期間・範囲を明示して定めることとし、基本契約では独占を約束しない形にしています。海外向けの卸売の条項は輸入品・海外製造品・海外向け販売のページで扱っています。

製造者の直接取引に対するコミッション:算定基礎と控除費用を限定する

販売窓口の会社と製造者が共同で開発した製品で、製造者が窓口を通さずに客先と直接取引した場合に、窓口の会社へコミッションを払う、という設計の取引基本契約もありました。手数料の型の一種ですが、紹介や営業の代行の対価ではなく、共同開発の成果を窓口を介さずに取引することの対価と、販売・営業の協力の対価として位置付けたものです(性格付けの経緯はOEM特有の論点のページで扱っています)。

改訂版では、算定の基礎を、製造者が客先に原料代を請求するかどうかで振り分けました。原料代を請求しない取引(加工だけ)は加工賃を、原料代を請求する取引は対価から原料の仕入価格を控除した額を、基礎とします。控除できる費用は、運送業者への運賃、客先の指示による外部検査の費用、客先の指示による特別な梱包の費用の三つに限り、請求書で区分して記載されたものに限りました。原案にあった「その他の実費相当額」は、控除の範囲が際限なく広がるため削除しています。

手続の面では、月次の明細(取引がない月もゼロと報告)、「受領」には相殺・任意の値引き・免除による消滅を含むこと(受け取り方を変えてコミッションを免れることを防ぐ)、客先の倒産などで回収できなかった分にはコミッションが発生しないこと、窓口の会社は5営業日以内に適格請求書を発行すること、年1回の帳簿の閲覧、を定めました。製造者の支払が遅れている間は、客先ごとに与えた包括的な承諾の効力を停止する、という定めも置いています。遅延損害金の代わりに、取引そのものを止める手続で支払を促す設計です。契約の終了後も、有効期間中に窓口の会社又は製造者が取引した客先との製造者の直接取引には、3年間コミッションが発生するとしました。承諾を取った客先だけに限ると、「承諾を取らないほうが得」という逆の誘因が生じるためです。

この案件では、取適法(旧下請法)の適用の有無も確かめました。当事者の資本金と従業員数の組合せから適用はないと判定しましたが、報告書の段階では、仮に適用がある取引であれば、製造者が窓口の会社に払うコミッションが、委託事業者が自己のために経済上の利益を提供させる行為(取適法5条2項2号)と見られないよう、対価としての性格を条文で明確にしておく必要がある、と指摘しています。手数料やコミッションの条項は、何の対価なのかを書いておくことが、法令との関係でも、相手方への説明の面でも土台になります。

手数料・コミッションの条項で確かめる項目

  • 算定の基礎(売上・加工賃・粗利)と、取引の形による振り分けが決まっているか。
  • 控除できる費用を限定列挙し、「その他実費」のような包括的な文言がないか。
  • 相殺・値引き・免除で受け取った場合も、受領として扱うか。
  • 回収できなかった分の扱い(発生しない・後で精算する)が決まっているか。
  • 月次の明細(ゼロ報告を含む)と、帳簿の閲覧の頻度が決まっているか。
  • 終了後の一定期間の発生と、その対象となる客先の範囲が決まっているか。

終了時の在庫と、ヒヤリングで確かめること

卸売の契約が終わったとき、販売店の手元に残った在庫は販売店の物です。化粧品・食品素材の掛率による取引の契約では、終了時の残存在庫は相手方が自己の費用で処分・再販売できるとしつつ、ブランドを損なうような低価格での販売はできない、とし、供給する側が買戻しを希望すれば協議する、としました。終了の直後に在庫が投げ売りされると、ブランドの価値が下がり、次の販売店との取引にも影響するためです。委託販売であれば、在庫は製造者の物なので、返還の方法と費用の負担を決めておきます。

ヒヤリング控卸売・委託販売

  1. 相手方は商品を仕入れて自分の名前で売りますか、こちらの商品として売りますか。卸売か委託販売かを確定し、所有権・精算・在庫の条項を組み立てます。
  2. 販売価格は誰が決めますか。希望小売価格を示していますか。再販売価格の拘束に当たる書き方を避け、参考価格として示す形にします。
  3. 販売先・販売方法・販売地域を制限したい理由は何ですか。制限の目的と範囲を説明できる形に整えます。
  4. 売上・在庫の報告はどの頻度で、どんな項目を受けたいですか。報告の書式・期限・異議の期限と、帳簿の閲覧を決めます。
  5. 取引が終わったとき、残った在庫をどうしたいですか。処分の条件、買戻しの協議、返還の費用を決めます。
  6. 相手方からの手数料・コミッションの算定で、控除される費用は何ですか。控除の範囲を限定列挙し、包括的な文言を除きます。

起きがちなこと

卸売や委託販売の取引を終えるときの予告期間と補償の考え方は取適法と継続的取引の終了、仕入代金の支払期日と相殺は価格・価格改定・支払条件のページをご覧ください。

よくあるご質問

「委託販売」と「卸売(仕入れて売る)」はどう違い、契約書のどこに表れますか?

委託販売は、商品が売れるまで所有者のもので、販売者は手数料を受け取り、売れ残りは所有者に戻ります。卸売は、仕入れた時点で所有権が相手方に移り、相手方は自ら販売価格を決めて差益を得ます。契約書では、所有権の移転時期、販売価格の決め方、収益が手数料か差益か、売れ残りの扱いに違いが表れます。

メーカーが小売価格を指定してよいですか?

自己の供給する商品を購入する相手方に、正当な理由なく販売価格を定めて維持させるなど販売価格の自由な決定を拘束する条件を付けることは、再販売価格の拘束として独占禁止法上の不公正な取引方法に当たります(独占禁止法2条9項4号)。希望小売価格は参考として示し、守らなければ解除や賠償の対象になる書き方をしないことが基本です。

ネット通販での販売や、販売先を禁止できますか?

販売先や販売方法の制限は、価格の拘束とは扱いが異なり、内容と目的によって評価が分かれます。相手方の事業活動を不当に拘束する条件をつけた取引は不公正な取引方法になり得るため、ブランドの管理や品質の維持などの目的と、それに見合った範囲であることを説明できる形にしておく必要があります。

取引をやめたとき、販売店に残った在庫はどうなりますか?

卸売なら在庫は販売店の物なので、契約で処分の条件を決めておきます。終了時の在庫は販売店が処分・再販売できるが、ブランドを損なう低価格での販売はできず、メーカーが買戻しを希望すれば協議する、とした例があります。委託販売なら在庫はメーカーの物なので、返還の方法と費用の負担を決めます。

委託販売の精算で揉めないためには、何を決めればよいですか?

締日・支払日、販売手数料の算定の方法(送料を含むか)、精算書の提出の期限と記載項目、製造者の確認・異議の期限を一つの条で決めます。精算書を翌月5営業日以内に提出し、製造者が5営業日以内に異議を述べなければ承認とみなす、とした例があります。

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