同じ取引先と商品を繰り返し売り買いする取引基本契約、自社ブランドの商品を他社に作ってもらう製造委託やOEM、仕入れて売る卸売や販売を任せる委託販売。事業者間の商品の取引の契約書には、注文に返事をしなかったら契約が成立するのか、原材料が上がったら値上げを求められるのか、発注を取り消されたら手配済みの包材はどうなるのか、不良の指摘はいつまで受けるのか、所有権はいつ移るのか、事故や回収の費用は誰が負うのか、取適法(旧下請法)は適用されるのか、長く続いた取引をどう終えるのか、という商品の取引ならではの論点が並びます。このガイドでは、アトラス行政書士法人がこれまで作成・レビューしてきた取引基本契約書、売買契約書、製造委託基本契約書、OEM契約書、委託販売契約書、卸売契約書、輸入品の売買契約書の実例と、条文の一次確認をもとに、作る側・頼む側・売る側のそれぞれが契約書で押さえておきたいことを、テーマごとに詳しく整理しています。

取引基本契約を結ぶ方

倉庫の通路の両側に並ぶ商品の棚

基本契約で決めた条件を、上書きさせない

基本契約は、注文のたびに数量・納期・価格だけ決めればよい状態を作る書類です。個別契約やシステム登録、発注書の特約欄が責任条項まで上書きする作りになっていないかを最初に確かめます。

「都度協議」だけの基本契約では、最初の不良や支払遅延の時点で基準がありません。個別契約の成立、価格の基準、検収、支払、不適合の扱いを先に書いておきます。

製造委託・OEMを受ける方

食品工場の生産ラインで作業する人たち

仕様起因の不良と、専用資材の損失を負わない

発注者が決めた仕様の不良は、原則として製造者の責任ではありません(民法636条)。その原則を裏返す条項を、仕様どおりの製造の免責や失権の範囲の限定で直します。

発注の撤回や取引の終了で、委託者の標章入りの包材が全損にならないよう、専用資材と仕掛品の買取り又は実費負担の条項を置きます。

自社ブランドの商品を作ってもらう方

縫製工場で生地を扱う作業台

品質基準・金型・横流しを、委託者の立場で固める

品質保証基準を別紙で数値化し、抜取検査に合格しても不適合責任を免れないこと、無断変更品は不適合品とみなすことを書きます。

金型は費用の負担と結び付けて帰属を決め、委託者の情報に依拠した同型品の製造や、規格外品の流通、実績としての公開を制限します。

検収・不良の扱いで迷う方

防塵服の作業員が顕微鏡で製品を検査する様子

検査期間と隠れた不適合の期間を、商材に合わせる

商人間の売買では、受領後遅滞なく検査し、不適合は直ちに通知しなければなりません(商法526条)。検収条項は、この枠を商材に合わせた日数に置き換える条項です。

検査期間、合格みなしの有無、その効果が隠れた不適合に及ぶかをセットで決め、客先への直送や特別採用の扱いも書いておきます。

卸売・委託販売・輸入販売をする方

トラックの荷台にフォークリフトで荷物を積む様子

所有権・精算・保証の範囲を、取引の型で決める

委託販売か卸売かは、所有権がいつ移り、収益が手数料か差益かで決まります。型に合わせて、精算書と異議の期限、報告、終了時の在庫を書きます。

海外製の物を輸入して売る場合は、販売者であって製造者ではない立場を確認し、保証をメーカーの対応に揃え、インコタームズで引渡条件を決めます。

取適法と取引の終了が気になる方

机の上の書類に署名する二人の手元

適用の判定から、終わり方の存続条項まで

製造委託に取適法(旧下請法)が適用されるかは、資本金と従業員数の組合せで決まります。適用があれば、発注書面の明示、60日以内の支払期日、協議に応じない代金決定の禁止などがかかります。

長く続いた取引の解約は、予告期間の相当性が問われ得ます。専用資材の精算と、終了後も効力を残す存続条項を先に決めておきます。

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よくあるご質問

取引基本契約書と注文書の内容が違ったら、どちらが優先しますか?

契約書の優先条項によります。多くの基本契約は個別契約を優先させていますが、それが責任条項にまで及ぶと、基本契約で決めた品質保証や賠償の上限が注文書で上書きされます。価格改定・品質保証・契約不適合・回収・損害賠償は基本契約を優先させ、変更には双方の明示の合意を要する、と書き分ける設計があります。

製造委託で、発注者の指示どおりに作った商品の不良も製造者の責任ですか?

民法636条は、注文者の供した材料や指図によって生じた不適合について、請負人の責任を否定しています(請負人が不適当と知りながら告げなかった場合を除く)。ただし、契約でこれを裏返す特約が置かれていることがあるので、仕様起因の不良の扱いと、サンプル承認の効果を確かめておきます。

検収期間は何日にすればよいですか?

商材によって違います。事務所の書類では、日持ちの短い食品の製造者側で「納品日を含め2日」、受託醸造で「5営業日」、取引基本契約で「10営業日」、設備で「1か月」などの例があります。検査期間、合格みなしの有無、その効果が隠れた不適合に及ぶかをセットで決めます。

代金を払ってもらうまで所有権を残すには、どう書けばよいですか?

所有権留保の条項に、留保の対象となる債務、留保中の譲渡・貸与・担保提供の禁止、不払いのときの返還請求と費用負担、回収のための立入りへの協力、完済後の名義変更への協力を書きます。受注生産品では前払いと組み合わせる方法もあります。

自社の製造委託に取適法(旧下請法)は適用されますか?

資本金3億円超の法人が個人又は資本金3億円以下の法人に委託する場合、資本金1千万円超3億円以下の法人が個人又は資本金1千万円以下の法人に委託する場合、従業員300人超の法人が従業員300人以下の個人又は法人に委託する場合(資本金の基準に当たる場合を除く)に適用されます。双方の資本金と従業員数で判定します。

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監修:アトラス行政書士法人(代表社員 荒木素子・特定行政書士) 最終確認日:2026年10月15日