このページの要点
- 表示は委託者が決定・承認し、その法令適合は委託者が責任を負う。製造者は明らかな問題に気付いたら通知する。
- 表示内容の決定に関与した事業者が表示の主体とされ得るので、製造者は表示の決定に深入りしない運用にする。
- 許認可の維持と失効のおそれの通知、相手方の許認可への協力は保証しないことと中止できる場合をセットで書く。
- 模倣品の疑いには、確定前の販売停止・在庫隔離・掲載削除の手順を置く。
結論:表示を決める者と責任を負う者を一致させ、許認可は「誰が取得・維持するか」と「協力の限界」を書く
食品・化粧品・酒類などの製造委託やOEMでは、商品のパッケージやラベルの表示、広告の表示が法令に合っているかどうかが、品質と同じくらい大きな問題になります。表示の誤りは、それだけで商品の回収や行政の対応につながるからです。ところが契約書を見ると、表示の内容を決めているのは委託者(ブランド側)なのに、「法令に適合した商品であることを保証する」という包括的な一文によって、表示の法令違反まで製造者の保証違反になる作りが少なくありません。
アトラス行政書士法人が作成・レビューしてきた契約書では、表示については「誰が内容を決めるか」と「誰が責任を負うか」を一致させる条項を置き、製造や販売に必要な許認可については「誰が取得・維持するか」「相手方はどこまで協力し、何を保証しないか」を書くようにしています。ここでいう許認可は、契約の条項に関係する範囲で扱うもので、申請の手続そのものではありません。
このページでは、法令適合の包括保証の問題、食品表示の条項、化粧品と模倣品の疑いへの対応、許認可の分担、売主が保証しない事項の書き方を、事務所の書類から整理します。表示の誤りによる回収の費用と賠償の上限は製造物責任・リコール・賠償の上限、仕様どおりに作った物の不良の扱いは契約不適合責任・品質保証のページで扱います。
「法令上問題のない商品であること」の保証が、表示の責任まで製造者に負わせる
PB(小売業者が自社の商標を付けて販売する商品)の製造委託基本契約を受注者側でレビューした案件では、受注者の保証事項の中に「日本の法令・規制等に照らして製造や販売等につき問題のない商品であること」という一号がありました。一見もっともな保証ですが、この文言では、委託者が作ったパッケージの表示に景品表示法や食品表示法の問題があった場合でも、受注者の保証違反と読めてしまいます。PB商品の表示は、通常、委託者が商品の企画とあわせて決めるものです。
報告書では、景品表示法上の「表示をした事業者」とは表示内容の決定に関与した事業者をいい、自ら表示内容を決定した事業者だけでなく、他の事業者に決定を委ねた事業者も含まれると判断した裁判例(ベイクルーズ事件・東京高判平成20年5月23日)を示しました。表示の決定に関与した者が責任を負う、という考え方に照らせば、「表示は委託者が決定・承認する」という役割分担を契約に明記することが、受注者にとっての防御になります。
ただし報告書は、この考え方が諸刃の剣であることも書き添えました。受注者が表示の決定に積極的に関わる(たとえば表示の文案を作って提案する)と、受注者も表示の主体と評価され得るからです。表示の責任を委託者に置くなら、運用の面でも、受注者は表示の内容の決定に深入りせず、法令上明らかな問題に気付いたときに通知する役割にとどめるのが一貫します。報告書は、この点を「表示に関する責任は委託者という一行が、PB受託で最も費用対効果の高い防御」とまとめています。
事務所の改訂例 法令適合の保証から表示の責任を切り分ける
保証の範囲
理由表示を決める者と責任を負う者を一致させます。受注者が負うのは、製造の工程と仕様どおりの製造についての保証です。
受注者の役割
理由通知の役割にとどめることで、受注者が表示の決定に関与したと評価される余地を小さくします。
食品表示の条項:指定した者が責任を負い、作成した者も責任を負う
自社ブランドのクラフトビールを受託醸造する契約では、食品表示の条を独立させ、三つの場面を分けました。商品の食品表示は食品表示法その他の関係法令に適合しなければならないこと。委託者が表示の内容を指定する場合は、その内容について委託者が責任を負い、受託者は法令上明らかな問題が認められるときは速やかに委託者に通知すること。受託者が表示の内容を作成又は変更した場合は、その適法性について受託者が責任を負うこと、です。
この書き方の要点は、「誰が決めたか」で責任を割り振り、例外として受託者が作った表示には受託者が責任を負う、と対称にしている点です。小規模な事業者が委託者の場合、表示の作成を受託者に任せることもあります。そのときは受託者が責任を負うことになるので、受託者は表示を作る業務を引き受けるかどうか、引き受けるならその対価をどうするかも決めておく必要があります。表示の作成を引き受けることは、責任を引き受けることでもあるからです。
条文例 第○条(食品表示)
- 本商品の食品表示は、食品表示法その他の関係法令に適合しなければならない。
- 甲が表示の内容を指定する場合には、その内容について甲が責任を負うものとし、乙は、法令上明らかな問題が認められるときは、速やかに甲に通知する。
- 乙が表示の内容を作成し、又は変更した場合には、その適法性について乙が責任を負う。
パッケージの版下を誰が作り、誰が最終承認するかの運用と、この条の割り振りを一致させます。
同じ受託醸造の契約では、受託者の法令遵守の義務を、酒税法、食品衛生法、食品表示法その他の関係法令を遵守し、善良な管理者の注意をもって商品の製造・充填・保管・出荷を行う、という形で定めました。受託者が守るのは、自らが担う製造・充填・保管・出荷の工程に関する法令である、と範囲を工程で区切っている点が、PB商品の原案の「法令上問題のない商品であること」という包括的な保証との違いです。法令遵守の条項は、どの行為について法令を守るのかを書くことで、表示や販売のように相手方が決める部分との境目がはっきりします。
表示の責任を委託者に置く場合、その前提として、委託者が表示を「指定・承認した」ことを後から示せる記録が必要です。PB商品の案件では、受注者が仕様どおりに製造した場合の免責の対象に「パッケージその他の表示を含む」仕様を入れる修正を提案し、あわせて、仕様書は双方が記名押印した原本を各1通保管する形に改めるよう求めました。表示の版下や仕様書の承認の記録が委託者の手元にしかなければ、表示の誤りが見つかったときに、受注者は「指定どおりに作った」ことを示す手段を持ちません。承認の記録をどちらも持っておくことが、責任の割り振りの条項を実際に働かせる条件になります。
食品の委託販売やOEMの契約では、表示を含む不適合に起因するクレームの費用の分担も決めておきます。精肉・調味料の委託販売の契約の整備版では、品質・表示・賞味期限などの不適合に起因するクレームの費用は製造者が、販売の方法・保管・広告の表示に起因するものは販売者が負担する、としました。商品のラベルは製造者、販売サイトの広告は販売者、という表示の作り手の違いが、そのまま負担の線引きになっています。
化粧品の表示と、模倣品・コピー品の疑いへの対応
化粧品の双方向型の仕入・販売基本契約(双方が売主にも買主にもなる契約)では、供給する側が、薬機法、景品表示法、化粧品の表示に関する公正競争規約、成分表示の基準、化審法、輸出貿易管理令などに適合する品質・成分表示・包装・添付文書・輸出入の管理・流通の管理を保証し、違反があれば相手方の指示で自主回収・表示の修正・行政への報告を行い、損害を賠償する、と定めました。化粧品は関係する法令が多く、どの法令に適合することを保証するのかを列挙しておくと、保証の範囲が明確になります。
この契約では、模倣品の問題にも条項を割いています。第三者の商品や知的財産を模倣・侵害した商品であることが判明した場合は、相手方は催告なしに契約を解除できるとし、その判断は表示・名称・ロゴ・パッケージ・説明文書・広告資材を含めて総合的に行う、としました。修正版では、コピー品の疑義が生じたときの手続を新設しています。疑義の通知から7営業日以内に初期の対応方針を示すこと、販売と出荷の停止、在庫の隔離、ECサイトの掲載の削除、未販売の在庫の返品・廃棄(通知後3営業日以内、証憑の提出)です。疑いの段階では、模倣品と確定していないため解除まではできませんが、販売を続ければ被害が広がります。確定前の暫定措置を手順として決めておくのが、この修正の狙いです。
コピー品の疑義が生じたときの手順(修正版で新設)
- 疑義の通知模倣・侵害の疑いがある旨を相手方に通知
- 初期対応方針通知から7営業日以内に初期の対応方針を示す7営業日
- 暫定措置販売・出荷の停止、在庫の隔離、ECサイトの掲載の削除停止
- 在庫の処理未販売の在庫を返品又は廃棄(通知後3営業日以内)、証憑を提出3営業日
- 判明した場合表示・名称・ロゴ・パッケージ・広告資材を含め総合判断し、無催告解除解除
許認可:誰が取得・維持し、相手方はどこまで協力するか
製造や販売に許認可が必要な商品では、契約書に「誰がどの許認可を持っていて、それを維持する責任を負うか」を書きます。受託醸造の契約では、受託者は契約期間中、酒類の製造に必要な免許その他の許認可を適法かつ有効に維持し、その取消し・失効・停止その他契約の履行に重大な影響を及ぼす事由が生じ、又はそのおそれが生じたときは、速やかに委託者へ通知する、という定めを修正版で加えました。委託者にとっては、受託者の免許が失われれば商品の供給が止まるので、その兆しを早く知ることが重要です。
同じ契約の修正版では、委託者自身が酒類をECなどで販売したいという希望を受けて、新しい条を設けました。委託者が酒類の販売のための免許その他の許認可の取得・維持を希望する場合は、委託者が自己の責任と費用で行うこと。委託者が受託者の冷蔵庫その他の保管設備を、関係法令に基づく保管の場所として使用・登録したい場合は、受託者の事業運営と法令遵守に支障のない範囲で、可否・利用条件・期間・費用負担などを誠実に協議すること。協議が成立した場合は、受託者は合理的な範囲で行政の手続に協力するが、免許の取得や登録が認められることは保証しないこと。手続の費用は委託者が負担し、協力が受託者自身の免許や事業に重大な支障を及ぼすおそれがあれば、受託者は協力の内容の変更や中止を求められること、です。
この条の要点は、協力の約束と、保証しないことと、協力をやめられる場合の三つをセットにしている点です。協力だけを約束すると、許認可が下りなかったときに受託者の協力が足りなかったと言われかねません。反対に、協力をまったく約束しなければ、委託者の事業計画が立ちません。相手方の許認可の取得に自社の設備や情報が関わる取引では、この三点セットの書き方が参考になります。
条文例 第○条(相手方の許認可の取得への協力)
- 甲が本商品の販売のために必要な許認可の取得又は維持を希望する場合には、甲は自己の責任と費用においてこれを行う。
- 前項の場合において、甲が乙の保有又は管理する設備の全部又は一部の使用を希望するときは、甲乙は、乙の事業運営及び法令遵守に支障のない範囲において、その可否、利用条件、期間及び費用負担その他必要な事項を誠実に協議する。
- 乙は、前項の協議が成立した場合には、合理的な範囲で甲の行政手続に協力する。ただし、乙は、甲が許認可を取得し、又は維持できることを保証しない。
- 本条に基づく協力が乙の許認可、法令上の義務又は通常の事業運営に重大な支障を及ぼすおそれがある場合には、乙は、甲と協議のうえ、協力の内容の変更又は中止を求めることができる。
協力の約束・保証しないこと・協力をやめられる場合の三つを一つの条にまとめています。手続の費用の負担も忘れずに書きます。
化粧品・食品素材を仕入れて再販売する契約では、製造元(第三者)が、化粧品の製造販売業の許可、化粧品の製造業の許可、食品衛生法上の営業許可など、必要な許認可を取得していることを、供給する側が保証する定めを置き、修正版2で許認可の種類を具体的に書きました。「必要な許認可を取得している」とだけ書くより、どの許認可かを特定したほうが、保証の対象がはっきりします。工業用化学製品のOEMでは、製造元が検査機関に資料を提出することに同意する「OEM同意書」を別に作りました。完全なOEM(製造のみ)で、製造元の表示は行っていないことを記載した書面です。表示と許認可は、契約本文だけでなく、関係者の同意書などの付属書面で手当てすることもあります。
売主が保証しないことを書く:設備・設置場所の法令適合性
設備や建物のような物を売る契約では、反対に、売主が法令への適合を保証しないことを明記する場面があります。海外で製造される生産設備を売る売主側の契約書では、食品衛生法その他の法令への適合性は保証しないと定めました。設備がどのような工程で使われ、どのような衛生管理と組み合わされるかは買主が決めることで、売主には管理できないからです。輸入したユニット建物の売主側の契約でも、設置場所の地盤・法令・建築確認の要否・耐震基準などへの適合性は買主が確認し、売主は保証しない、としました。
保証しないことを書くときは、その代わりに買主が確認する、という形で責任の所在を移しておくのが要点です。単に「保証しない」とだけ書くと、誰も確認しないまま設置が進み、後で法令に合わないことが分かったときに、説明が足りなかったという争いになります。買主が確認すべき事項を列挙し、売主は確認のための資料を提供する、という書き方にすれば、双方の役割がはっきりします。海外製の設備の保証の範囲は輸入品・海外製造品・海外向け販売のページで詳しく扱います。
表示と許認可の条項を、立場でどう書くか
製造者・受託側
- 保証は製造の工程と仕様どおりの製造に限り、表示の法令適合は委託者の責任とする。
- 表示の問題は、法令上明らかなものに気付いたときに通知する役割にとどめる。
- 自社の製造の許認可の維持と、失効のおそれの通知を約束する。
- 相手方の許認可の取得への協力は、保証しないことと中止できる場合をセットにする。
委託者・ブランド側
- 適合を保証させる法令を列挙し、違反時の自主回収・表示修正・報告の手順を決める。
- 製造元の許認可の種類を特定して保証させる。
- 模倣品の疑義が生じたときの暫定措置(停止・隔離・掲載削除)を決める。
- 受託者が表示を作成する場合の責任と対価を決める。
ヒヤリングで確かめること
ヒヤリング控表示と許認可
- パッケージ・ラベルの表示の文案は誰が作り、誰が最終承認しますか。表示の責任の割り振りと、運用を一致させます。
- 広告・販売サイトの表示は誰が作りますか。クレームの費用の分担を、表示の作り手で分けます。
- 製造・販売に必要な許認可は何で、誰が持っていますか。許認可の維持と通知の義務、保証の対象を特定します。
- 相手方が許認可を取るために、自社の設備や情報を使う予定はありますか。協力の範囲、保証しないこと、中止できる場合を条文にします。
- 他社の商品と似ていると指摘されるおそれのある商品ですか。模倣品の疑義が生じたときの手順を置くかを決めます。
- 設備や建物を売る取引で、設置場所の法令適合は誰が確認しますか。売主が保証しない事項と、買主が確認する事項を列挙します。
起きがちなこと
表示と許認可の問題は、OEMの商品の知的財産やブランドの管理とも関係します。商標やレシピの扱い、横流しの禁止はOEM特有の論点(知的財産・金型・横流し)のページをご覧ください。
よくあるご質問
PB商品の食品表示が間違っていた場合、製造を請け負った側も責任を負いますか?
契約の書き方と、表示の決定への関与の仕方によります。「法令上問題のない商品であることを保証する」という包括的な保証があると、委託者が決めた表示の誤りも製造者の保証違反と読まれ得ます。表示は委託者が決定・承認し、その法令適合性は委託者が責任を負う、製造者は明らかな問題に気付いたら通知する、と分けておくのが製造者側の防御になります。
表示の決定に関わると、なぜ責任を負うことになるのですか?
景品表示法上の「表示をした事業者」について、表示内容の決定に関与した事業者をいい、自ら決定した事業者だけでなく他の事業者に決定を委ねた事業者も含まれる、と判断した裁判例(東京高判平成20年5月23日)があります。製造者が表示の文案を作るなど決定に積極的に関わると、製造者も表示の主体と評価され得ます。
OEMで作る化粧品の許認可について、契約には何を書けばよいですか?
製造や販売に必要な許認可を誰が取得・維持しているかを特定し、保証させます。「必要な許認可」とだけ書くより、化粧品の製造販売業の許可、製造業の許可など、許認可の種類を具体的に書いた改訂例があります。許認可の失効のおそれがあるときの通知義務も置いておきます。
酒類のOEMで、委託者が自分でネット販売したい場合、契約に何を書くべきですか?
委託者の販売のための許認可は委託者が自己の責任と費用で取得すること、受託者の設備を使う場合は支障のない範囲で協議すること、協議が成立すれば受託者は合理的な範囲で協力するが許認可が認められることは保証しないこと、協力が受託者の事業に重大な支障を及ぼすおそれがあれば変更・中止を求められること、をセットで書いた例があります。
取引先の商品が模倣品だという疑いが出たら、どうすればよいですか?
契約に手順があればそれに従います。疑義の通知から7営業日以内に初期の対応方針を示し、販売・出荷の停止、在庫の隔離、ECサイトの掲載の削除を行い、未販売の在庫を返品・廃棄して証憑を出す、という手順を定めた例があります。模倣品と判明すれば、表示・ロゴ・パッケージ・広告資材を含めて総合的に判断し、無催告で解除できるとしています。
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本ページは一般的な情報提供を目的としています。個別の取引への当てはめは、取引の実態や当事者の規模によって結論が変わることがあります。事務所の改訂例・ご相談の事例として紹介している内容は、アトラス行政書士法人が作成・レビューしてきた取引基本契約書、売買契約書、製造委託基本契約書、OEM契約書、委託販売契約書、卸売契約書、輸入品の売買契約書、レビュー報告書とご説明書などを、個別の事業者や商品が特定できない形に整理したものです。条文は e-Gov法令検索で確認しています(最終確認日:2026年10月16日)。参考: e-Gov法令検索